ヘンテコノミクス : 行動経済学まんが
佐藤雅彦さん、菅俊一さんが執筆された「ヘンテコノミクス : 行動経済学まんが」を読みました。

本書は、メディアクリエイターが執筆した異色の行動経済学入門書。マンガで、行動経済学のエッセンスを学ぶことができる一冊です。

概要

ヘンテコノミクス : 行動経済学まんが / 佐藤雅彦, 菅俊一原作 ; 高橋秀明画.
東京 : マガジンハウス, 2017.11. 159p : 24cm.
ISBN: 978-4-8387-2972-2


佐藤雅彦さんは、NHK教育で放送されている「ピタゴラスイッチ」の監修者として有名なメディアクリエイター。また、昔流行った「だんご3兄弟」の産みの親としても知られています。

経済に関する著作には、竹中平蔵さんと共著で出された『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞社, 2002.9)があります。


もう一人の原作者の菅俊一さんは、研究者・映像作家として、多摩美術大学で教鞭をとられているクリエイター。

『ヘンテコノミクス』は、この二人のクリエイターが執筆した経済行動学の入門書です。

マンガという形を通して、わたしたちが知らず知らずのうちにとってしまう非合理な経済行動(=ヘンテコノミクス)
について、教えてくれます。

この本が取り上げているのは、次のようなトピック。

  • フレーミング効果
  • アンカリング効果
  • 代表性ヒューリスティック
  • 極端回避性
  • 保有効果
  • 参照点依存性

何やら難しい専門用語が並んでいますが、この本では脱力系のマンガで説明が行われているので、気楽に読み進めることができます。

目指したのはサザエさん!?

あとがきのなかで、『ヘンテコノミスク』を製作したエピソードが語られています。

行動経済学の面白さを知った佐藤さんたちは、たくさんの人に行動経済学の魅力を伝えたいと考えるようになります。

どのような表現手法をとれば、より多くの人たちに伝わるか、さまざまなアイデアが出ては消えていったそうです。アイデアを出し合うなかで、一番盛り上がったのが、「サザエさんに脚本を提供する」というアイデア

確かに、国民的アニメのサザエさんで、行動経済学が紹介されると興味を持つ人は多そうですよね。

誤った判断をしてしまうサザエさんやノリスケさんには共感できそうですし、行動経済学の考えをずる賢く使うカツオくんには呆れながらも笑ってしまいそうです。

実現に向けて、サザエさんの制作チームにプレゼンしようと盛り上がっていたお二人ですが、次第に現実的な方法を考えるようになりました。

その現実的な方法というのが、「サザエさん的なマンガを自分たちで作る」という方法。マンガ担当に高橋秀明さんを迎え、出来上がったのが『ヘンテコノミクス』というわけです。

サザエさんに出てくるお馴染みのキャラクターではありませんが、本書ではちょっぴり変わったキャラクターたちのエピソードを通して、行動経済学的な考え方を描くことに成功しています。

笑いながら読むことができる行動経済学入門書

この本の特徴は、経済学の専門家ではないメディアクリエイターたちが執筆した点だと思います。クリエイターならではの発想で、行動経済学の知見が面白く紹介されています。

個性豊かなキャラクターたちには、くすりとさせられる場面が何度もありました。「こういうことってあるよね」と共感させられることも多数。

行動経済学の本は読んでいて面白いことが多いのですが、そのなかでも『ヘンテコノミクス 』はおすすめの一冊です。

ぜひ多くの方に、本書を読んで行動経済学の面白さに触れていただければと思います。

行動経済学まんが ヘンテコノミクス
佐藤 雅彦
マガジンハウス
2017-11-16