インデックス投資入門
2017年は、吊られた男さんの著書をはじめ、インデックス投資を紹介する本が相次いで出版された一年になりました。

そんななか、今月、新たなインデックス投資の入門書が発売されました。インデックス投資家の間で名著とされてきた『敗者のゲーム』の著者、チャールズ・エリス(Ellis, Charles D.)の新作です。

今回ご紹介する『チャールズ・エリスのインデックス投資入門』(日本経済新聞出版社, 2017.12)は、インデックス革命史を総括し、投資家にインデックス投資を勧める一冊です。

概要

チャールズ・エリスのインデックス投資入門 / チャールズ・エリス. ; 鹿毛雄二, 鹿毛房子訳.
東京 : 日本経済新聞出版社, 2017.12. 205p : 19cm.
原題: The Index Revolution : Why Investors Should Join It Now.
ISBN: 978-4-532-35762-7

著者のチャールズ・エリスは、ハーバード・ビジネス・スクールなどで教鞭をとったこともある資産運用の専門家で、イエール大学財団の運用委員会委員を16年間も務めた人物。インデックス投資のバイブルとされる『敗者のゲーム』の著者としても知られています。


敗者のゲーム〈原著第6版〉
チャールズ・エリス
日本経済新聞出版社
2015-01-24



新作である本書の目次は、次のとおり。

  • 第1章 アクティブからインデックスへ
  • 第2章 世界の株式市場は劇的に変化した
  • 第3章 インデックス投資の成績はアクティブ運用に勝つ
  • 第4章 手数料が安い
  • 第5章 運用で最も重要な意思決定に集中できる
  • 第6章 税金が安い
  • 第7章 売買コストが安い
  • 第8章 リスク管理に役立つ
  • 第9章 「ファンドマネジャー選択のリスク」を避けられる
  • 第10章 ミスターマーケットに惑わされない
  • 第11章 時間を有効に使える

本書は、第1部「インデックス運用への長い道のり」と第2部「インデックスを勧める10の理由」の2部構成になっています。

インデックス革命史

原題が"The Index Revolution"となっているように、前半の第1部では、株式市場の劇的な変化により、インデックス投資の優位性が高まったという「インデックス革命」の歴史についてまとめています。

1998年におけるインデックスファンドへの投資総額は2,400億ドル程度でしたが、2015年には2兆1,000億ドルの規模にまで、急拡大しています。

このようにインデックスファンドが急成長した背景について考察するとともに、過去50年間の投資人生を振り返る形で、アクティブ運用の信奉者であったエリスが、いかにしてインデックス投資を勧めるようになったのか、その理由がユーモラスに語られています。

インデックス投資を勧める10の理由

後半の第2部(第2章〜第11章)では、投資家にインデックス投資を勧める10の理由が説明されています。第2章から第11章までの章タイトルが、それぞれの理由です。

「まえがき」において、エリスはインデックス投資への批判に対して、反論を試みていますが、第2部は反論の根拠をより具体的に解説した内容になっています。

印象に残った言葉を紹介します。

大きな損失は市場が落ち込んだときに特定の株式を買ったり、あるいは売ったりしたとき、もしくは、「人気」ファンドにつぎ込むと被るものだ。(中略)広く分散投資されたインデックスファンドは、大きく儲けたいという誘惑から投資家を守り、自分の長期投資戦略から外れないようにしてくれる。
(154ページから引用)

投資で成功する秘訣として、エリスは「不必要な大きな損失を出さないこと」を挙げています。投資のタイミングを狙ったり、特定の人気ファンドに集中投資したりすることが、判断ミスによる損失につながります。

そうした誘惑を避けるためにも、広く分散されたインデックスファンドを持ち続けることが重要であると、改めて感じました。

最も難しい仕事は最適な投資政策の策定ではない。特に株式市場のピークや大底で長期的な視野を維持し、そしてその長期的投資方針を維持し続けることだ。
(170ページから引用)

インデックス投資において重要なのは、市場に居続けること。「ミスターマーケット」に惑わされないためには、時折、自分の投資方針を確認する必要があるようです。

バートン・マルキールによる「推薦の辞」

本書には、インデックス投資の名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』のバートン・マルキール(Malkiel, Burton Gordon)が「推薦の辞」を寄せています。

巻末の方に収録されていますが、本書の内容についてまとめた解説文になっているため、最初に読むとい良いかもしれません。本書の理解を助けてくれると思います。

インデックス投資入門とは言うけれど・・・

本書は、インデックス革命の歴史を振り返った上で、投資家に対して、インデックス投資を勧めるものです。インデックスファンドを活用すべき理由を、10の観点から解説してくれます。

タイトルに「インデックス投資入門」とありますが、内容はやや通好み。初心者の方が最初に手にする一冊としては難しいかもしれません

インデックス投資について、ある程度知識のある方におすすめしたい一冊です。

チャールズ・エリスのインデックス投資入門
チャールズ・エリス
日本経済新聞出版社
2017-12-14



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