年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、平成28年度業務概況書を発表しました(2017年7月7日)。

GPIFの発表によれば、昨年度の運用状況は次のとおりです。

GPIF 平成28年度運用状況
平成28年度市場運用開始以降
収益率5.86%(年率)2.89%(年率)
収益額7兆9,363億円(期間収益額)53兆3,603億円(累積収益額)
運用資産額144兆9,034億円(平成28年度末現在)
(出典:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)平成28年度業務概況書

2016年度は、6月に起きたブレグジットや11月のトランプ・ショックなど、一時的な急落はあったものの、概ね国内外株式が堅調だったため、7兆9,363億円の収益を上げています。

平成28年度末における運用資産別の構成割合は下記のとおり。基本ポートフォリオ
(出典:年金積立金管理運用独立行政法人「平成28年度業務概況書」から転載)

国内債券 31.68%
国内株式 23.28%
外国債券 13.03%
外国株式 23.12%
短期資産  8.89%

第3四半期末の構成割合と比較すると、短期資産の割合が高まっていますYoutubeにアップされている質疑応答によれば、短期資産の割合が高まった理由として
  • 次の投資の余力を増やすために、キャッシュポジションが大きくなっている
  • 金利が低いため、国内債券への再投資が難しい状況。国債の償還による自然減もあり、国内債券の割合が小さくなった
ことが挙げられるそうです。

「低コスト」と「インカムゲイン」の重要性を再認識

今回、「平成28年度業務概況書」を読んでみて、改めて感じたのが、「低コスト」と「インカムゲイン」の重要性です。

2016年度のGPIFの管理運用委託手数額は、400億円。運用資産額に対する管理運用委託手数料率は、0.03%です。近年、インデックスファンドの低コスト化が進んでいるとはいえ、ここまでの低コストは実現できていません。

業務概況書によれば、カリフォルニア州職員退職制度(CalPERS)などの海外公的年金の運用コストと比較しても、GPIFの運用コストは低い水準になっているそうです。

運用コストは、確実に運用成績を押し下げる要因です。私自身の運用でも、GPIFの運用を参考に、低コスト志向で運用を行なっていきたいと改めて感じました。

もう一点、興味深かったのが次のグラフ。
インカムゲイン
(出典:年金積立金管理運用独立行政法人「平成28年度業務概況書」から転載)

上記のグラフはインカムゲイン(利子・配当収入)の推移を表したものです。

累積収益額は、相場環境によって大きく変動しますが、インカムゲインは安定した収益を上げていることが分かります。

特に興味深いのが、リーマン・ショックで相場が落ち込んだ2008年度でも2兆1,994億円(収益率は1.87%)のインカムゲインを得ていること。

GPIFの説明にもあるとおり、「長期投資家にとっては、優良な資産を長期で保有し、利子や配当による収入を着実に積み上げていくことが重要」だと感じました。

まとめ

GPIFの業務概況書は、長期投資を行う上で参考になるデータが数多く掲載されています。また、情報のまとめ方、見せ方でも参考になる点が多く、資料づくりのお手本にもなりそう。

これからも勉強のために、GPIFの公開情報をチェックしていきたいと思います。