インデックス投資で長期航海

インデックス投資を中心とした投資ブログ。30代の会社員が資産形成、お金、教育について語ります。

三菱UFJ国際投信株式会社が、「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」(信託報酬年率0.34% 税抜)の募集・設定のプレスリリースを公開しました。

【外部リンク】『eMAXIS Slim 新興国株式インデックス』募集・設定について | 三菱UFJ国際投信

今回、新規設定されるファンドの概要は、次のとおり。

eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
  • 購入時手数料: なし
  • 信託財産留保額: なし
  • 信託報酬: 0.34%(税抜・年率)
  • 販売会社: 楽天証券、マネックス証券、SBI証券、カブドットコム証券
従来、MSCIエマージング・マーケット・インデックスをベンチマークにした新興国株式インデックスファンドの信託報酬は、低コストなものでも0.495%0.600%(年率・税抜)でした。

しかし、今回、「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」の登場により、新興国株式クラスの信託報酬最安値は、0.340%になります。他の株式クラスに比べると、低コスト化が遅れていた新興国株式クラスにおいて、価格破壊が起きたことになります。

類似ファンドとの比較

今回、新規設定された「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」と類似ファンドを比較したものが、次の表です。

新興国株式インデックスファンド比較
信託報酬率(年率・税抜)信託財産留保額
委託会社販売会社受託会社合計
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス0.1600%0.1600%0.0200%0.3400%なし
eMAXIS 新興国株式インデックス
0.5400%0.0600%0.6000%0.3000%
たわらノーロード 新興国株式0.2275%0.2275%0.0400%0.4950%0.3000%
野村インデックスファンド・新興国株式0.2800%0.2800%0.0400%0.6000%0.3000%

※ 「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」と「eMAXIS 新興国株式インデックス」は、"受益者還元型"信託報酬率を採用。上記の信託報酬率は、500億円未満の部分に適用されるものを使用しています。


新興国株式クラス最安値ファンドが、これまでの「たわらノーロード 新興国株式」から「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」に変わっています。

また、新興国株式クラスでは、「信託財産留保額あり」のファンドが多いなか、「eMAXIS Slim 新興国株式インデックス」は、信託財産留保額を設定していません

「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」は、同じマザーファンドですが、ベビーファンドによって、信託財産留保額の扱いが異なるようです

今後、「eMAXIS」も信託財産留保額を廃止するのでしょうか?注目したいと思います。

新興国株式クラス最安値ファンドが変更、ファンドは乗り換える?

「eMAXIS Slim 新興国インデックス」の登場によって、新興国株式クラスでも低コスト化が進み、最安値ファンドが変更になりました。

投資信託にかかるコストは、確実にリターンを押し下げる要因になるため、低コストなインデックスファンドの購入が望ましいですが、ファンドの乗り換えはしません

理由は次の2点。

  1. 「ベンチマークとの乖離がないか」「資金の流出入はどうか」などの見極めが必要だから
  2. 「配当込みインデックス」の方が好みだから

「eMAXIS Slim」は、「eMAXIS」とマザーファンドを共有するため、新規ファンドとはいえ、「ベンチマークとの乖離」などの問題はなさそうです。ただ、資金の流出入については、どうなるか分かりません。しばらく様子をみたいと思います。

個人的な好みですが、他の株式クラスでも「配当込みインデックス」に連動するファンドを購入してきました。「eMAXIS Slim」は、「eMAXIS」と同様に「配当除くインデックス」に連動するファンドだと思われます。そのため、ベンチマークとの乖離や資金の流出入に問題がなくても、個人的には乗り換えることはなさそう・・・

他社ファンドの動向に期待

「eMAXIS Slim 新興国インデックス」の登場は、他社のファンドにどのような影響を与えるのでしょうか。

新興国株式クラスにも押し寄せてきた低コストの流れに対して、他社がどのような反応を見せるのか、今後の動向に注目したいと思います。


【参考】新興国株式クラスの積み立てを「たわらノーロード 新興国株式」に変更します。

発売されたばかりの『毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資』(ぱる出版, 2017.7)を読みました。

概要

毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資 / 吊ら男.
東京 : ぱる出版, 2017.7. 208p : 19cm.

著者の吊ら男(つらお)さんは、人気ブログ「吊られた男の投資ブログ(インデックス投資)」の管理人で、現役のサラリーマン投資家です。本書が、初の著作になります。

本書の目次は、次のとおりです。
  • 第1章 ズボラ投資は100円からだって可能です!
  • 第2章 ズボラなあなたの代わりに世界中の人に働いてもらう
  • 第3章 なぜズボラ投資は儲かるのか?
  • 第4章 ズボラ投資家を誘惑するボッタクリ投資の見抜き方
  • 第5章 ズボラ投資でより儲けるために
発売日当日に、最寄りの書店に買いに行ったところ、同じくタイトルに「ズボラ」を含む『ズボラでも「投資」って、できますか?』(高橋忠寛著)と並んで、売られていました。



ズボラ投資 = インデックス投資

吊ら男さんが書かれた本書は、「ズボラ投資」というキーワードを使い、インデックス投資をすすめる内容になっています。

ブログでは、理詰めで論理を積み上げていく文章が持ち味ですが、本書は投資初心者を意識した内容になっており、分かりやすい文章で、インデックス投資のエッセンスがまとめられています。

ボッタクリ商品の避け方

本書のもうひとつの特徴が、ボッタクリ商品の避け方について、詳しく書かれている点です。

第4章では、ポンジ・スキームと呼ばれる金融詐欺、金融機関が勧めるボッタクリ商品(マジメ系ボッタクリ)の避け方が、具体例とともに説明されています。

私自身にも経験がありますが、投資に興味を持ち始めると、「もっといい投資法はないか」「もっといい商品がないか」と、様々な投資法や金融商品に目移りしがちです。

しかし、世の中には、「ぼったくり」と言いたくなるような商品が多く存在するため、「いかにボッタクリ商品を避け、着実に資産形成していくか」ということが重要になります。その点で、投資初心者が陥りがちな罠について取り上げ、丁寧に解説を行なった本書はとても参考になると感じました。

まとめ

本書をおすすめしたいのは、これまで貯金しかしてこなかったような投資初心者の方です。本書を読むことで、インデックス投資の有効性、ボッタクリ投資の避け方を、ざっくりと知ることができます。

ただ、全体的に、投資初心者向けを意識しているためか、インデックス投資の理屈っぽい話は、あまり書かれていません。そのため、本書でインデックス投資に興味を持ち、なおかつ理論的背景を知りたい方は、他の本も読んでみることをおすすめします。


臆病者のための億万長者入門
橘玲(たちばな あきら)さんの『臆病者のための億万長者入門』(文藝春秋, 2014.5)を読みました。

概要

臆病者のための億万長者入門 / 橘玲.
東京 : 文藝春秋, 2014.5. 254p : 18cm.

著者の橘玲さんは、金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。小説の他にも投資や経済に関する著書を数多く執筆されている方です。

本書の目次は、次のとおりです。
  • はじめに 金融業界の不都合な真実をすべてのひとに
  • 第1章 資産運用を始める前に知っておきたい大切なこと
  • 第2章 「金融の常識」にダマされないために
  • 第3章 臆病者のための株式投資法
  • 第4章 為替の不思議を理解する
  • 第5章 「マイホーム」という不動産投資
  • 第6章 アベノミクスと日本の未来
  • 終章 ゆっくり考えることのできるひとだけが資産運用に成功する
  • あとがき 金融リテラシーの不自由なひとに感謝を

金融業界では、誰もが当たり前だと思っているけれど、不都合であるため、ほとんどの人が説明してこなかった「資産運用の常識」。本書は、そんな資産運用の常識をシンプルな論理で説明してくれます。

株式投資、為替、不動産投資といった資産運用全般に関わるテーマを取り上げ、リスク耐性が低く「臆病者の投資家」である個人投資家に対して、自分や家族の生活を守るための方法を指南する構成になっています。

あとがきのタイトルが、「金融リテラシーの不自由なひとに感謝を」となっていることからもわかるように、説明の語り口はややシニカル。クスリと笑ってしまうような文章が散りばめられています。


インデックス投資家におすすめなのが、第3章の「臆病者のための株式投資法」。

「レバレッジ」、「複利」、「複雑系」といったキーワードを挙げながら、株式投資やインデックス投資の有効性を説明しています。

特に、次の文章が印象に残っています。
「資本主義」とは、複利とレバレッジによってバランスシートを拡張していく運動のことなのだ。
(109ページから引用)
株式会社は、株主から集めた資本金に、銀行などからの借金(=レバレッジ)を加えた総資産を運用しているため、長期的に市場が成長していくのであれば、レバレッジをかけた分だけ有利である、という主張でした。

本書は、株式投資のほかにも
  • 「マイホームと賃貸、どちらが得か」といった議論
  • 金融商品としてみた「宝くじ」の罠(「愚か者に課せられた税金」という表現が印象的)
  • 為替の不思議
  • 年金問題
といったお金に関わる様々な常識を解説しています。

金融リテラシーを高めるためにも、時折読み返すことで、本書が取り上げている金融の常識を身につけていきたいと思います。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、平成28年度業務概況書を発表しました(2017年7月7日)。

GPIFの発表によれば、昨年度の運用状況は次のとおりです。

GPIF 平成28年度運用状況
平成28年度市場運用開始以降
収益率5.86%(年率)2.89%(年率)
収益額7兆9,363億円(期間収益額)53兆3,603億円(累積収益額)
運用資産額144兆9,034億円(平成28年度末現在)
(出典:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)平成28年度業務概況書

2016年度は、6月に起きたブレグジットや11月のトランプ・ショックなど、一時的な急落はあったものの、概ね国内外株式が堅調だったため、7兆9,363億円の収益を上げています。

平成28年度末における運用資産別の構成割合は下記のとおり。基本ポートフォリオ
(出典:年金積立金管理運用独立行政法人「平成28年度業務概況書」から転載)

国内債券 31.68%
国内株式 23.28%
外国債券 13.03%
外国株式 23.12%
短期資産  8.89%

第3四半期末の構成割合と比較すると、短期資産の割合が高まっていますYoutubeにアップされている質疑応答によれば、短期資産の割合が高まった理由として
  • 次の投資の余力を増やすために、キャッシュポジションが大きくなっている
  • 金利が低いため、国内債券への再投資が難しい状況。国債の償還による自然減もあり、国内債券の割合が小さくなった
ことが挙げられるそうです。

「低コスト」と「インカムゲイン」の重要性を再認識

今回、「平成28年度業務概況書」を読んでみて、改めて感じたのが、「低コスト」と「インカムゲイン」の重要性です。

2016年度のGPIFの管理運用委託手数額は、400億円。運用資産額に対する管理運用委託手数料率は、0.03%です。近年、インデックスファンドの低コスト化が進んでいるとはいえ、ここまでの低コストは実現できていません。

業務概況書によれば、カリフォルニア州職員退職制度(CalPERS)などの海外公的年金の運用コストと比較しても、GPIFの運用コストは低い水準になっているそうです。

運用コストは、確実に運用成績を押し下げる要因です。私自身の運用でも、GPIFの運用を参考に、低コスト志向で運用を行なっていきたいと改めて感じました。

もう一点、興味深かったのが次のグラフ。
インカムゲイン
(出典:年金積立金管理運用独立行政法人「平成28年度業務概況書」から転載)

上記のグラフはインカムゲイン(利子・配当収入)の推移を表したものです。

累積収益額は、相場環境によって大きく変動しますが、インカムゲインは安定した収益を上げていることが分かります。

特に興味深いのが、リーマン・ショックで相場が落ち込んだ2008年度でも2兆1,994億円(収益率は1.87%)のインカムゲインを得ていること。

GPIFの説明にもあるとおり、「長期投資家にとっては、優良な資産を長期で保有し、利子や配当による収入を着実に積み上げていくことが重要」だと感じました。

まとめ

GPIFの業務概況書は、長期投資を行う上で参考になるデータが数多く掲載されています。また、情報のまとめ方、見せ方でも参考になる点が多く、資料づくりのお手本にもなりそう。

これからも勉強のために、GPIFの公開情報をチェックしていきたいと思います。

2017年度の第1四半期末を迎えましたので、2017年6月末時点の資産状況を公開します。

【参考】前回の資産状況は、以下をご参照ください。

運用資産(コア部分)のアセットアロケーション

201701Q2
国内債券 44.3%(目標配分:45%)
国内株式 5.0%(目標配分:  5%)
先進国株式 39.7%(目標配分:40%)
新興国株式 11.0%(目標配分:10%)

株式市場の上昇により、国内債券の比率が目標配分よりも小さくなっていたため、6月分の積立でリバランスを実施しました。ボーナスの一部を普通預金(国内債券代わり)に追加入金しています。普通預金がまとまった金額になってきたので、証券会社のキャンペーンを利用し、個人向け国債にリレー投資していきたいと思います。

なお、2017年6月末時点での運用資産(コア部分)と運用資産(サテライト部分)の比率は、66%:34%でした。

運用資産(コア部分+サテライト部分)の推移

運用資産(コア部分+サテライト部分)の推移は、下記のとおりです。
201701Q1
今まで取り崩すことなく積立投資を続けてきたため、投資額が順調に積み上がっています。また、世界的に株式市場が好調なため、評価額も過去最高額を更新。相場が好調だと、つい気が大きくなりがちですが、あらかじめ決めておいたアセットアロケーションに従い、定期積立を続けています。

月々の余力やボーナスの大部分は、投資待機資金として、キャッシュポジションを確保し、次の「〇〇ショック」に備えて置きたいと思います。

まとめ

前回の資産状況報告でも書きましたが、今年のどこかで相場の転換期を迎えるのかもしれません。しかし、相場がどのようであっても、低コストのインデックスファンドを中心に、国際分散投資を続けていきます。

次回の公開は、2017年9月の予定です。

↑このページのトップヘ